第16章 指輪
『なぁ、あの後、どうなったよ?』
翌週の町内会チームの練習の時、
嶋田達が声をかけてきた。
『あ?うん、ま、お前らの助言通り…』
『マジ?決めた?!』
…という流れで、
練習後、そのまま飲みに行くことになり、
色事の詳しいことはさておき、
とりあえず、つきあうことになった、
ということを報告している真っ最中、
スマホがなる。アキ姉からだ。
『おー、今、嶋田達とおすわり。』
『え?飲んでくるなら電話してよ!
ご飯、待ってたのに。』
『わりぃ。急に決まったから。』
『急だって、連絡くらいしてよ。
繋心が食べないなら、わざわざ作らなかったよ!』
『だから、わりぃって。』
…空気を読んだ嶋田が、電話を奪う。
『アキさん、すんません。
俺達が誘ったんスよ。ですよね~、
今度からちゃんと電話させますんで。
はい、それじゃ…』
電話が切れたのを確認した嶋田が言う。
『おい、繋心。こーいう時は
電話しとかなきゃ、ダメだろ!』
『…お前ら、家に電話したのかよ?』
したした、もちろん。と、
二人が当たり前みたいに頷く。
『うちなんか、電話したって不機嫌だったぞ。』
『うちも。"もうバレーの日は、
ご飯いらないね"とか言って。慣れてっけど。』
『めんどくせーなぁ。
だから結婚とかヤなんだよ。
つきあってるだけでも、
そんな気、使わなきゃなんねーか?』
『そりゃ、お前が今まで自由すぎたんだって。』
『一緒に住んでんなら、そこは気配り大事、大事。』
『とにかくさ、もう、帰れよ。
付き合いだしたばっかりだろ?
こういうことでケンカすんなよ〜。
帰ったらとりあえずお前から
ちゃんとゴメンって言えよ、な?!』
…また、追い返された。
結婚したわけじゃねぇのにな。
自分の時間を自分で使うのに
なんでイチイチ報告がいるか?
『…ただいま。』
『…お帰り。早かったね。』
テレビから目を離さないアキ姉。
『嶋田達が、早く帰れって言うから。』
『…ふーん…別に、連絡一本くれれば、
何時まで飲んでてもかまわないのに。』
目もあわせずにそう言われると、
カチンとくる。
『じゃ、もう一回、行って来っかな。』
『どーぞ、どーぞ。
明日、ちゃんと自分で起きてよね。』
…売り言葉に買い言葉、とはまさにこのこと…