第16章 指輪
裸で抱き合う俺とアキ姉の間で
股間の高ぶりが存在感を増していく。
部屋の片隅にたたんであった
布団を敷こうと身体を離した時、
アキ姉が、いきなり膝まづいて
ソレを口にした。
…いきなり?
驚きと快感で、
身体も思考もしばらく固まる。
一心不乱に俺を舐めるアキ姉。
思わず射精しそうになって、
ふと意識が戻る。
『…ちょ、ちょい待てって。まだ、』
ハッと我にかえったような顔で
俺を見上げたアキ姉は、
真っ赤な顔で、
そして消え入りそうな声で、言った。
『ごめん、つい…』
『どうした?』
『つい、反射的に…
気持ちよくなってもらわなくちゃ、
やる気になってもらわなくちゃ、
出して、もらわなくちゃ、って…』
何かで聞いたか読んだかしたことがある。
妊娠の可能性のある日…排卵日、だっけ?
気分が乗らなくても、調子が悪くても
しなくちゃ、ならない。
男は気分で左右されるから…
『やれ』と言われて
『ハイ、ヤりましょ』と
やれるもんでもない。
むしろ、プレッシャーになりそうだ。
旦那をその気にさせるために、
きっと、何でもやってきたんだろう…
自分が気持ちいいかどうかなんて
二の次、三の次で。
快感や欲望や愛情でなく、
"作業"としてのセックス。
その努力が、
実を結ぶことはなかったわけだ。
男の俺には想像できないくらい、
きっと、屈辱的で切ない思いを
何度もしてきたに違いない。
"女として、抱いて。"
当たり前みたいな言葉が
どれだけ深い心の奥から
振り絞られた願いなのか。
考えただけで…
いや、考え、られない。
きっと、わかってあげられない。
俺に、何が出来る?