第16章 指輪
『お前って、そんな草食系だったっけ?』
『金髪ピアスでその弱腰、笑えるぞ!』
…親友は、時として容赦ない…
町内会バレーの後、
嶋田と滝ノ上を誘って飲みに行き、
その席で、現状を相談してみたら、
そう笑われた。
『だいたいさ、なんでそんな、全部
ダメになる前提で考えるんだ?』
滝ノ上が、あきれた顔で言う。
『烏養ぃ、お前、自分がアキさんのこと、
好きかどうかわかんねーって言うけど、』
『わかんねーよ。女として好きなのか、
よく知ってる隣のねーちゃんだから
フツーに居心地がいいのか、
さっぱりわかんねー。』
『…さっきから、言ってること全部、
好きっていう前提の話ばっかりだぞ。』
『え?そうか?』
『そうだろ。
前の旦那さんに気ぃ使ってんのも、
まだキスも出来ねーのも、
付き合おうって言えねぇのも、
一緒に暮らしてんのに押し倒せねーのも、
好きだから、だろ?
そうじゃなかったら、
そんなことで遠慮なんかしねーよ、
少なくとも今までの烏養なら、な。』
…はっ。
気付かなかったけど、そうなのか?
西谷、これがお前が言ってた
"落ちる"ってヤツなのか?!
『ま、どのみち、
"この先10年、このまんま"
ってわけにはいかねーもんな。
どっかでカタつけねーと。
じゃねーと、アキさんが、かわいそーだ。』
『なんで?』
『だってお前はともかく、
アキさんにとって貴重な女盛りの時間だぞ。
まだ、再婚できるくらい魅力的だからな。』
『そうそう、それに、
体だって、きっと寂しがってるぞ~。』
『お前ら、他人事だと思って
勝手にいろいろ妄想すんな、バカ!』
『でも、進むか進まねーか、ってことは、
結局、そういうことだろ?』
『ましてや、
お前が1回、誘いを断ったんなら
もう、アキさんからは誘いづらいだろーが。
お前から誘わなかったら、
もう、この先、一生、チャンスねーぞ?!』
…そうだよな。
あの日、アキ姉の誘いを断ったのは、俺だ。
あれはあれで間違ってなかったと思う。
けど。
確かに、俺から誘わねーと、
次は、ない、気がする…。