第16章 指輪
同居生活が始まって一カ月。
ようやく慣れてきた
ほどよい距離感の毎日なのだけど。
最近、ずっと気になっていることがある。
…俺たち、この先、どうなるんだ?
アキ姉と並んで眠ったあの翌日から、
俺はまた、廊下で寝ている。
…アキ姉の中に、
まだ、前の旦那のことが残ってる、と思ったから。
10年の間、苦楽を共にしてきた夫婦の時間に
そう簡単に踏み込めねー、と、思ったから。
もちろん、キスだって、1回もしていない。
…俺の恋愛史上、最遅スピード、だ。
考えてみる。
もし、今、俺から『つきあおう』って言って
断られたら?
…同居生活、気まずくなるだろうなぁ。
もし、今、俺がガバッと押し倒して
強引に抱いたら?
…同居生活、即刻、終わるだろうなぁ。