第16章 指輪
今日もビールジョッキを傾けながら、
メニューを見なくても言えるくらいおなじみの
いつもの何品かを頼み、
アキ姉の新しい職場のこと、仕事の話、
会社の近くの店のランチメニューが
安くてお気に入りなこと…そんな話をする。
『40過ぎて新しい仕事って、大変じゃね?』
『ラクじゃないけどさ、
何もしないといろいろ考えちゃうから、
それよりマシ。じーっと一人で考えるのは…
もう、疲れちゃった。』
…ん?
これはもしかして、
意地張るの、やめたってことか?
こっちから
聞いてほしいんじゃないだろうか?
『アキ姉、話したくなければ
言わなくても全然構わねーけどさ、
…何があった?』
ずっと、気になってたことだったから、
こっちから話をふってしまった。
アキ姉は、
思っていたより寂しそうな顔で、
離婚の原因を話してくれた。