第16章 指輪
…結局、その夜はずっとこんな感じで、
大した話はしないままだった。
昔から、
テストの成績も、
生理が始まったのも、
彼氏が出来たのも別れたのも、
なんでも知ってるくらい
家族か親戚みてーな存在だったけど…
今日は、聞きたいことは、聴けなかった。
なんでか、って?
明るく振る舞う様子が
"女"だったからだ。
気持ちだけで自分を支えている、
強そうだけど、弱い女。
こっちからそこをつついたら、
きっと、不用意に崩れてしまうだろう。
せっかく意地をはってるのに、
それは失礼だ。
自分から"疲れた"と言えるまで、
思う存分、
意地を張らせてやりたい、と思った。
…"隣のアキ姉"に
そんな感情を持ったのは、
これが初めてだった。