第16章 指輪
翌日も、昨日と同じように
風呂から上がり、縁側に出る。
チラリと眺めたら隣のベランダには
紺色のブラとパンティ。
『警戒心、なさすぎだろ…』
タバコをふかしながら苦笑いしてると、
そのベランダに人が出てきた気配がする。
『おい、昨日はエンジで今日は紺色か。
俺は黒とか赤が好きだぞ。』
ひょこっとベランダから
こっちに身を乗り出した姿。
『ヘンタイ君!久しぶり!』
『見たくもねぇもん見せられた上に
勝手にヘンタイ扱いすんじゃねーよ。』
カラカラッと笑う声。
『ごめんごめん!
繋心の家からしか見えないから
気が緩んでんのよね。』
『ま、いっつもそこに干してある
おばちゃんのデカパン見てっからな。
あれとかわんねーか。』
『なに、それ。一緒にしないで~。』
…会うのは久々だけど、
軽口のリズムは昔と一緒だな。
『なんだ?今、夏休み?』
『…ま、それもあるし。
おばーちゃんの法事もあってね。』
『うちにも顔出せよ。母ちゃん、喜ぶから。』
『あー、そうだそうだ、久しぶりに、
繋心んちの揚げ春巻き、食べたいなぁ!』
『おう。母ちゃんに言っとくから、
こっちいる間に食いに来いや。』
『…ん。おばちゃんに、よろしくね。』
何年ぶりにあっても
いつも同じ会話してる気がする。
幼馴染みというより、
隣の家のアキねぇちゃん。
…この年齢で、
ねぇちゃんって呼ぶの、どうなんだ?
ま、一生、俺より二つ上のねぇちゃんに
変わりねーんだけども。