第16章 指輪
『ほぁ…』
気の抜けた声が出てしまう。
1日の終わり。
風呂入って、
缶ビールとタバコ持って、
庭に向かって縁側に座る。
タバコに火をつけて
缶ビールをプシュッと開けるのが
何より幸せ…という、
独り身のオッサンじみた俺。
39歳。
オッサンじみた、じゃねーか。
もう十分、オッサンだ。
『雲が出てきたな…
明日は天気、崩れんのか?』
タバコをふかしながら
何気なく空を見上げてたら、
隣の家の二階のベランダが目に入った。
いつもと違うもんがぶら下がってたから。
エンジ色のブラと、お揃いのパンティ。
『…帰ってきてんのか。
うるさくなりそうだな…』
下着見て思うことがそれって、
相変わらず、緊張感のない間柄だ。
風呂上がりの体の火照りもほどよく冷めた。
『母ちゃん、飯~。』
タバコの火を消して、窓ガラスを閉める。
庭1つ隔てた向こう側。
子供の頃から変わらない距離に、
久々に、母ちゃん世代以外の
ブラが揺れようが
パンティがはためこうが、
別にどーってことはない。
家族か親戚みたいもんだからな。