第15章 100回目のプロポーズ
ようやく再会できた俺とアキだけど
それからはお互い、
留学の準備や挨拶回りに忙しく、
ほとんど会えずにいた。
下手すると、次に会うのは、
出国するときの成田空港か?!
向こうにいる間だって、
何回会えるかわかんねーしな…
そんな気すらしてきたある日、
スガさんから連絡があった。
俺達がそれぞれ、
スガさんの新聞社の
インタビューを受けるのを兼ねて、
壮行会を開いてくれる、という。
『ありがたいですけど…スガさん、
俺とアキ…いや早瀬が知り合いって
なんで知ってるんですか?』
『知り合いどころか、長い付き合いなんだろ?』
『…付き合い出したの、
スガさんたちが卒業してからですけど。
しばらく別れてて、
再会したのはつい最近だし。』
『新聞記者、ナメんなよ~。
情報収集は俺らの得意技だからな。』
『…スポーツ紙でもないのに
恋愛関係の情報まで収集します?』
『まぁ、そのへんの小さいことは気にすんな!
とにかく、
烏野から後輩が二人も世界に飛び立つんだ。
めでたいことなんだから、賑やかにやるべ!』
…ま、スガさんなら信頼できる。
これが、同級…日向や月島からの誘いなら
はなっから疑ってかかるとこだけどな。
そんなわけで、
俺達は、付き合い出して以来初めて、
二人揃って人前に並ぶことになった。
当日、会場に行ってみると、
俺が予想していたより
はるかに立派な壮行会で…
普段着を脱がされ、俺はスーツを、
アキは振り袖を着せられて。
地元のスポーツ関係や美術関係の
偉い人の挨拶まであり。
なんとなく居心地が悪いほど
立派な壮行会…だったのは最初の30分だけで
そのあとは、
バレー部の仲間やアキの大学時代の友人など、
気心の知れた仲間だけ残って、立食パーティー。
ちょっとした
同窓会のような雰囲気になって初めて、
少し、ホッとした。