第15章 100回目のプロポーズ
『ねぇツッキー、あのふたり、
いつからつきあってんのさ?』
『多分、高2からでしたよ。
卒業して別れたって聞いてたけど、
まさか復縁してたとは…意外ですね。』
『…ほら、あの、菅原君だっけ?新聞記者の。』
『あぁ、スガさん。』
『彼、文化部って言ってたから、
きっとトビオの彼女を取材するはずじゃん、
東京の美展で大賞とって留学とか、
あの街にしたらビッグニュースだからさ。』
『はぁ…』
『イタリア前後でトビオのインタビューも
独占で取らせるって約束してさ、
そのバーターで、
二人一緒の壮行会、開いてやんなよ、』
『…及川さんがそんなこと言うなんて、
何か裏があるとしか思えませんけど。』
『ふっふーん、
トビオがあの彼女に色ボケして、
当分、イタリアから帰ってこなければ
いいのにな~、って思ってさ。』
『なるほど…で、本音は?』
『もう、ツッキーたら、冷静っ。
…俺さ、トビオのこと、大嫌いじゃん。
それは、』
『影山の実力を認めてるから、デショ?』
『そう。アイツ、天才の上に努力家だから
大嫌い、なんだけど…
もし、俺が引退する時が来るとしたら、
俺のポジションは、トビオ以外の奴に
渡したくないんだよね。
アイツならしょーがねー、って思える。』
『へぇ。』
『トビオはバレーバカだからさ、
俺たちと違って、バレー以外の楽しみに
興味ないじゃん。』
『細かく突っ込んですみません、
俺達?バレー以外の楽しみ?』
『ほら、俺とかツッキーみたいに、
女の子とか女子とかレディーとか
興味ないじゃん、トビオは。』
『…』
『いや、だからさ、誰かがトビオを
適度に使いこなしておかないと、
アイツまた、敵つくったり、
自分基準でしか、物、考えられなく
なりがちだからさ。
チビちゃんとか、あの彼女みたいな子に
ふりまわされてるくらいが
ちょうどいいんだって。』
『及川さん、結婚してから、
ちょっと他人に優しくなりましたよね、
気持ち悪い。』
『その言葉、そのまんまツッキーに返すよ!』
『一緒にしないで下さい。』
『…とにかく、トビオは、しばらく
俺の前からいなくなってくれて、
そんで、俺が辞める頃に、力、ピークで
復活してくれたらサイコー!』
『及川さんも相当、自分基準ですよね。』
『ツッキー、いちいち話の腰、折らないで!』