第15章 100回目のプロポーズ
『ね、トビオ、今のプロポーズだったの?』
『あ?おぅ、一応な。』
『あと一回しかしない、って言ってた、
その一回に入る?』
『…いや、どうだろ?てか、お前、返事は?』
『うーん、ごめん。』
『は?もう何も問題ねーだろ?
このタイミングでプロポーズ断るって
どういうことだよ?!』
『だって、大学卒業する時に
みんなでシンガポール行った時のパスポートが
まだ使えるんだもん。』
『…それが理由?!』
『ギャハハ、トビオ、超 斬新なフラれ方だね!』
『今のは、フラれたんじゃねーっすから。
事務的な理由です!』
『…トビオ、ごめんね、貴重な一回を…』
『違うだろ、ほら、100回まで、
あと何回か残ってるだろ?』
『あ、100回までの方、復活?
だったらあと13回、残ってるよ。』
『じゃ、そっちに変更だ。
プロポーズは、100回まで。』
『へぇ!じゃ、トビオ、今まで87回も
フラれてんの?諦め悪いねぇ!
ね、メガネちゃん、
そんなしつこい男、やめてさ、
俺とデートしない?君、メガネはずして
髪型変えたら、美人になれるよ!
この及川さんが、君をお姫様に変身させて
あげるからさっ。』
『もう、マジ、うっせーな!
及川さんは口、出さないで下さい、
これはこっちの問題なんでっ!!』
『はいはい、わかったよ、フラれキング。
あぁ、笑いすぎて腹筋、ちぎれる~。
さて、練習、戻ろ~っと。』
…廊下に誰もいなくなったことを
何度も何度も確認してから、
窓にもドアにも鍵をかけ…
『アキ』
抱き締める。
『やっぱ、俺のアキだ。
お前、すげーよ。…よくやったな!』
『トビオ、』
アキが、俺を見上げる、
メガネの奥の瞳は潤んでて…
『待っててくれて、
信じててくれて、ありがとう!』
アキを一番理解できるのは、俺だ。
俺をこんな気持ちにさせるのも、アキだけだ。
『アキ、今度こそ、結婚しよーぜ。』
『何言ってんの、
あと二ヶ月しかないんだから
これから準備で大忙しだよ!』
『また、フラれた(笑)』
『残り、12回だね(笑)』
久しぶりにみる
アキの笑顔が眩しくて…
たまらず、唇を重ねた。
半年ぶりのキスは、
熱くて、甘くて…
そう、
これは、
俺だけの、唇、だ。