第15章 100回目のプロポーズ
『なぁ、アキ、
パスポート、影山の名字で取らないか?』
『なんで?』
『なんで、って…そしたら、新婚旅行でも
そのまま使えるだろ?』
『そっちの方が便利なの?』
…あれ?
プロポーズだって、気づいてねーのか?
その時、廊下の窓の隙間から声がした。
『メガネちゃん、今の、プロポーズだよ!』
は?今の声、まさか…
『…及川さんっっっ!?』
スーッと、窓が開く。
『ごっめーん、トビオ。
あんまりにも面白そうだったからさ、
成り行き、見守らせてもらっちゃったよ~。
トビオも、半年じゃなくて1年、
イタリア行ってくればいいじゃん。
全日本には俺がいるから、
お前いなくても全然、大丈夫。』
『そういう問題じゃないですからっ。
ってか、覗き見、やめて下さい!』
『だって、ツッキーがさぁ。』
『は?つ、月島もいるんですかっ?!』
さらに窓が開いて、
月島のニヤニヤした顔が現れる。
『俺には感謝した方がいいんじゃない?
じゃないと彼女、門の前で延々と、
待ってなきゃいけなかったんだからさ。
それより、君達、まだ付き合ってたわけ?
王様、案外、一途なんだねぇ。』
及川さんはともかく、
月島には、返す言葉が見つからない。
クソッ~、
今、大事なところなのに、
調子狂うじゃねーか!
…と想っていた俺を現実に引き戻したのは、
やっぱりアキだった。