第15章 100回目のプロポーズ
監督?
マネージャー?
…役員とかだとめんどくせーな。
『失礼します。』
ノックしてから会議室の扉を開けた瞬間、
言葉を失った。
三つ編みにメガネ姿の…
『アキ?』
『トビオ…』
『…お前、なんでここに?』
『会社訪ねて行ったら、
全日本の合宿中だっていうから。
ここ、調べて、思い切って、来た。』
『何でここに入れるんだよ?』
『外でウロウロしてたら、
ちょうど月島君の姿が見えて…
どうしても
トビオに伝えなきゃいけないことがある、
って頼んだら、入れてくれた。』
…クソ、月島に借り、作っちまった。
ま、それはいい。
それより、目の前のアキだ。
『…何の用だよ。』
『トビオ…怒ってる?』
『は?怒ってねーよ。
会って1分で何を怒るんだよ?』
『いろいろ…最後に会った時のこととか
私がここまで来たこととか…』
『怒ってねーよ。
あん時、俺は俺の思ったことを言っただけだし
今日だって、何か用があるから来たんだろ?
怒る理由がねぇ。』
『…でも、顔も声も、超、怖い。』
『生まれつきだ、ボケ!
…で?何の用だ?
午後練まで、あと20分しかねーけど。』
『わかった。あのね、2つ、用件があって。
まず1つ目。あの時は、ごめんなさい。
私が悪かった。トビオに比べて
なかなか結果が出せなくて…
正直、相当、焦ってた。
ちょっと、逃げてたし、甘えてたと思う。
トビオにあそこまで言われて、
ホントに目が覚めた。』
『いや、俺も、言い方キツかったよな。わりぃ。』
『あの時、"夢もトビオも失うぞ"って
言われて、やっと気付いた。
トビオのプロポーズに自惚れてた自分に。
だからね、
トビオに顔向け出来る結果か、
自分が納得いく結果が出せるまで
トビオには連絡とらない、って決めて
自分を追い込んだ。』
『…ボケ。また勝手に決めやがって。
心配すんだろが。電話くらいしろ!』
『ごめん。でも、声聞いたら、また
甘えるかケンカしちゃいそうだったから。』
…言葉では怒ってしまうけど…
よかった。
やっぱりアキには、
俺の気持ち、ちゃんと伝わってたんだ…