第15章 100回目のプロポーズ
『王様、怖い顔して、
何グズグズ独り言、言ってんの?』
…声に振り向く。
誰なのかは、顔、見なくてもわかるけど。
『うるせー、月島にはカンケーねぇ。』
『わ、八つ当たり?おぉ、怖い怖い。』
『なんだよ、なんか用か?』
『用がなきゃ、声なんかかけないデショ。』
『だから、何だよ?!』
『呼び出しだってさ。』
『誰?何?』
『俺は呼んでこいって言われただけ。』
…何だ?留学の件か?
『早く行きなよ。第一会議室ね。』
月島は、全日本の広報の仕事をしている。
合宿中は
こうしてチームと一緒に行動しているから、
まぁ、イヤでも顔は合わせるし、
高校の頃に比べたら
お互い大人になってるから、
あの頃みたいにぶつかることはないけど、
今日は、なんとなく、ムカつく。
…俺の八つ当たりだって、わかってる…
『わーったよ。すぐ行く。』
一度握りつぶしてしまった留学通知を
もう一度、手のひらで丁寧に伸ばし、
きちんと折り曲げて、ポケットに入れた。
…アキにも、もちろん月島にもカンケーねぇ。
これは、俺が掴んだチャンスだ。
一人ででも、
誰も喜んでくれなくても、
俺は、イタリアに行く。
…『ねぇツッキー。さっきトビオが
怖い顔してガツガツ歩いて行ったけど、
何かあったの?』
『あ、及川さん。
相変わらず、王様のこと、よく見てますね。』
『だって、気になるじゃん。
トビオは後輩じゃなくてライバルだからさ。
何、何?不調?ケガ?
え、もしかして、不祥事かな~?』
『そういうこと、
ワクワクした顔で言うもんじゃないですよ…
でも、面白いもの見れそうだから、
ついていってみますか?』
『マジ?行く行く!
トビオの弱点、探しちゃおーっと。』