第15章 100回目のプロポーズ
結局、それから10時まで
カフェで飯を食いながら時間を潰し、
ウニクロにオープンと同時に駆け込んで
シャツを買ってその場で着替え、
二人で新幹線のホームに到着したのは
11時すぎだった。
…アキと再会して、
まだ1日もたっていない。
そう、24時間前は、
再会することすら考えてなかった。
でも。
その半日で、
俺達の間は劇的に変わった。
高校を卒業した時に始めるつもりだった
遠距離恋愛が、やっと、始まる。
多分、これから何度も、こうやって
新幹線のホームで別れることを
繰り返すことになるんだろう。
『トビオ…
バイバイって言うの、やっぱり辛いね。』
俺だって、そうだ。
でも多分、俺よりアキの方が、辛い。
俺との未来より、
自分の夢を追う道を選んだ、
という気持ちがあるだろうから。
東京という都会に一人で行かせる、という
不安もあるはずだ。
だから、俺が"オレ様"でいてやんねーと。
『なんだよ、悲しんでる暇、ねーだろ?
早く、夢、叶えて近くに来いよ。
俺だって、じーさんになる前に
結婚してーんだからな。
…そうだな、俺がお前に
100回プロポーズするまでに
夢、叶えろ。じゃねーと、さすがの俺も
待ちくたびれて諦めるかもしんねーぞ。
うん、決めた。
これは、命令だ。
お前が夢を追う期限は、
俺のプロポーズ100回まで!』
『まじ?今、何回した?』
『高校卒業する時に1回だろ、
今日、さっき、1回したから、
あわせて、2回だな。』
『あ、いっぺんに10回言ったりすんの
ナシにしてよ。有効なのは1日1回まで。』
『おい、こまけーな…』
『で、残りは98回かぁ。よぉし、頑張るよ!』
『…出来れば、50回くらいで
何とかしてもらいてーけど。』
『努力はする。でも、約束は出来ない…』
『だよな(笑)』
…わかってる。
夢に期限なんか、なくていい。
努力したからって、
報われるとは限らない。
でも、何か、この先に、
二人共通の"光"が欲しいんだ。
そこに向かって歩いていけば大丈夫、
という、揺るぎない行き先が。