第15章 100回目のプロポーズ
バスローブを羽織って脱衣所を出ると、
すぐ目の前に、アキが立っていた。
『どうした?』
『…どうしたらいいかわかんないから、
ここで待ってた。』
うわ、この初々しさは何なんだ?!
『…お前、ホントに…その…
俺と別れてから誰とも?』
『そうだよ。トビオと別れてから、
誰ともつきあってない。』
『いや、セックス…』
『誰ともつきあってないって言ってんだから
当たり前じゃんっ!何度も言わせないで!!』
…軽いパンチが飛んでくる。
高校の頃、何度か、抱いた。
でもそれは、学校だったり、
お互いの家の部屋でこそこそだったから、
声も出せないし、ゆっくりでもない、
慌ただしく、ただ
欲望を吐き出すだけの行為だった。
今から初めて、
ちゃんと、
気持ちを通わせながら、抱く。
『アキ、覚悟しろよ。
今夜は、寝かさないし、離さない。
3年分、俺に抱かれろ。』
黙って頷くアキ。
それを合図に、アキのメガネをはずす。
長いまつげと、黒くて大きな瞳。
三つ編みをとめていたゴムをはずして
指で髪をほどくと、
ゆるいウェーブの跡がついた黒髪が
ハラリと広がって…
俺だけのアキが現れる。
乱暴なくらいに強く抱き締めて、
激しくキスをした。
『…わりぃ。優しくできねーかも。』
『…ん、優しくなくていい。
気持ち、全部、ぶつけて。』
こんな素直なアキ、初めてじゃね?
それこそ、色っぽくて、我慢できねーよ…
唇をあわせながら舌を侵入させ、
アキの舌と絡ませる。
唾液も吸いつくして、
銀の糸を引かせながら離れて、
今度は舌を出して舐めあって、
首筋も鎖骨も、舐めながらキスして…
『…んぁ…トビオ、キスだけでイキそう…』
『ふざけんな、まだ始まったばっかだぞ。』
グイッとアキを抱き抱えて、ベッドに運ぶ。
…俺達の、初めての夜の、始まりだ…