第15章 100回目のプロポーズ
『泣くと、自動的に鼻水出る仕組み、
どうにかならないもんかな?』
赤くなった鼻をズルズル言わせながら
アキが言う。
『マンガの女の子って、
キラキラ涙流しながら泣くじゃん。
あれって、ズルいと思うんだよね。
リアルで泣くと、鼻水出てさ、
全然、可愛くないんだよ。
せめて、男の人の前で泣くときは、
鼻水、出さないで、って、
マジで神様にお願いしたい。
多分、全女子、同じこと思ってるはず。』
…プリプリ怒りながら鼻をかむアキを見て、
俺は、笑いが止まらない。
俺、今、どんだけアキが大事な存在か
真面目に考えてたっていうのに、
お前、鼻水のこと、考えてたのかよ?
ホンット、俺の考えてることを
やすやすと飛び越えていくヤツだな!
だから、見てて飽きないんだ。
だから、アキじゃなきゃ、ダメなんだ。
『風呂入ってこいよ。ぐっずぐずの顔してっぞ。』
『トビオは?』
『俺は、その後でいい。
そんなガキみてーな顔してねーで、
ちゃんと女子らしくなってこい。
…俺が、抱きたくなるくらい。』
パアッと頬を赤くして、アキが頷く。
『あ、メガネと三つ編みはそのまんまにしとけよ。
俺がはずすんだからな。』
跳び跳ねるように風呂場に向かう
アキの後ろ姿を見てると、
俺も、顔がほころぶ。
…久しぶりに、心から笑った気がするな…