第15章 100回目のプロポーズ
『トビオ、私も、わかったことがある。』
『なんだ?』
『トビオがいっつも私に遠慮しないで
ぶつかってきてくれてたことが、
どんだけ居心地がよかったか、ってこと。』
『…そうか?』
『うん。だから私もトビオの前だと、
そのまんまの自分でいられたんだって。
友達はさ、楽しいけど、そうはいかないね。
やっぱりトビオは特別だった。』
『だった…って、過去形かよ?』
『これからのことは、わかんないじゃん。』
『わかるよ。これからやっと、
俺達の遠距離恋愛が始まるんだろ。』
『…状況は3年前と何もかわってないよ?
私はトビオと違って、まだ自分の夢、
何一つ叶ってないから…
大学でても、トビオの近くに行けない。』
『当たり前だろ。
夢の途中で来られても俺だって迷惑だ。
自分の夢は自分でなんとかしてこい。
近くに来るのは、それからでいい。』
『いいの?』
『いいって。場所も距離もカンケーねぇ。
ただ、俺の彼女でいろ。』
『トビオ…あたし今、
嬉しくて、泣きそうなんだけど。』
『泣けよ、ここで。好きなだけ。』
…別れた日と同じように、
アキを俺の右肩に抱き締めた。
あの日、涙で終わった俺達。
あの時と同じ場面から、
続きを始めたいから。