第15章 100回目のプロポーズ
ビルに飛び込み、階段を駆け上がる。
片付けが始まったギャラリーは
さっき来た時と違い、ガランとしていた。
アキの絵が飾ってあった壁も
今は、何もない空間になっている。
受付の花やテーブルを
片付ける大学生が数名。
アキの姿は………ない。
近くにいた学生に声をかける。
『おい、アキ…早瀬さんは?』
『アキちゃん?さっきまでそこいたよね?』
『裏で積み込みしてんじゃね?』
…早く、早く行かねーと。
『う、裏って、どこだ?』
『あっちだけど~、』
『もう出発したかも。』
『あたし、見てきましょうか?』
…クソ、呑気に話してんじゃねーよ!
『いや、俺が行く。どっち?どっちだ?!』
…教えてもらった薄暗い階段を駆け降りる。
一刻も早く行かないと。
ここですれ違ったら、
俺、
一生、後悔する。
パッと開けた視界の前。
ワゴン車に、
丁寧に包まれた作品を積む数人の中に
三つ編みが見えた。
間に合った!
思わず、大きな声で叫ぶ。
『アキ!』
そこにいた数人が、一斉に振り返る。
『トビオ…』
不自然な空気がありありの俺達を見て
アキの仲間たちが気を使ってくれた。
『アキちゃん、こっち、やっとくから。』
アキが、軍手をはずしながら近づいてきた。
『トビオ、どうしたの?』
『アキ…』
何て言ったらいいんだ?
ヤバ…
そこまで、深く考えてなかった…。