第15章 100回目のプロポーズ
西谷さんから
披露宴の招待状が届いたのは
その頃のことだった。
もちろん、出席で返事を出す。
バレー部の中で、一番最初の結婚式だ。
久しぶりに会った仲間たちは
みんなそれぞれに環境が変わり、
少しずつ大人になっていた。
相変わらず元気一杯、
しかも幸せ一杯の西谷さんを見てると、
自然とお互い
『結婚とか、考えてる?』という話題になる。
俺達、学生組はともかく、
もう卒業して就職した大地さんや
高校をでてすぐ働き始めた旭さんは
結婚を考えている相手がいるらしい。
みんなのそんな話を黙って聞いていたら、
縁下さんが話しかけてきた。
『そういや、ついこの間、
お前が高校の頃つきあってた
あのメガネちゃん、見たぞ。』
…一瞬、どんな顔をしていいかわからなかった。
俺が焦ったの、気付かれなかっただろうか?
『…どこでですか?』
『俺が働いてる新聞社のビルって、
2階が喫茶店とギャラリーになってんだけどさ、
そこ、一週間単位でいろんな作品展やってんだよ。
今週、そこで美大生のグループ展やってて、
そこにいた。間違いねーと思うよ。』
『へぇ、そうなんですか。』
『あれ、もう、別れてんのか?』
『はい、とっくの昔に。
高校出てから、一度も会ってないっすもんね。』
『なんだ、そーか。
じゃ、関係ねーな、ごめんごめん。
そうだよな、東京なら、しかも影山なら
女の方からわんさか寄ってくるんだろ?
遠距離恋愛、耐える必要、ないよなぁ。』
そんなんじゃねーんすけどね。
…遠距離恋愛、始めることさえ出来なかった…
そこから先は、
縁下さんの話も西谷さんのスピーチも
ほとんど覚えていない。
この街のどこかに、アキがいる。
そのことで、頭がいっぱいだった。