第15章 100回目のプロポーズ
アキの涙で濡れた俺の右肩が、冷たい。
その冷たさが、
これが夢ではなく現実なんだと
教えてくれる。
『わかったよ…アキ、俺たち、』
…あぁ、言いたくない。
言った途端に、世界が変わってしまう。
でも…俺が、言わねーと。
これ以上、アキの口から
こんな苦しい言葉、
言わせちゃいけないだろ。
『俺達、今日で…
…これで…終わりにしよう。』
…俺の心から、血があふれ出す音がした。
プロポーズしたばかりの口で、
別れを告げることになるなんて、
この景色が、
別れの場所になるなんて、
ついさっきまで、
思いもしなかった。
泣きじゃくるアキの声が大きくなる。
言葉に出来ない思いが
涙になってあふれてるってわかるから、
キツく、アキを、抱き締めた。
俺の胸の痛みと一緒に。
…これで終わりなら。
せめて最後に、
これまで一緒にいた時間が
嘘じゃなかったってことを、
アキの口から、聞かせてほしい。
『アキ、最後に1つだけ、
聞きてーことがある。』
…アキが、顔をあげた。