第15章 100回目のプロポーズ
『…あ?』
俺、今、プロポーズしたんだぞ?
その返事が
『今日で、終わりにしよう』?
アキだって、今、この瞬間も
俺の手をキツく握りしめてるじゃないか。
何をどう間違えれば、
そんな言葉が出る?
『…アキ、今、何て言った?』
アキが、俺を見つめて言う。
『私、これから何年も、
トビオのために、何もしてあげられない。
そばにいることも出来ないし、
支えてあげることも。
トビオのこと大好きなのに、
自分の夢も、諦めきれない。
トビオの夢を叶えるための彼女は、
私じゃダメだ。
これから東京行って、ファンも増えて、
きっとトビオのことを好きになる子も
たくさんいる。
私よりトビオの力になれる子が
きっと、いるから。』
まっすぐ、こっちを見てる。
でも、声が、ときどき震えてる。
それは、
強い意思と、
揺れてる心。
どんな苦しい思いで、
その言葉を吐いてるんだよ…
反論せずに、いられないだろ。
『支える、って、何だよ?
別に、家事とかしてほしくて
アキと結婚したいわけじゃねーぞ?
アキに出来なくて、
他の女に出来ることって、何だ?』
『…そばにいて、
トビオが必要だって思う時に、いつでも
話したり触れたり応援したりしてくれる人が
絶対、欲しくなるって。』
『…んなもん、アキ以外にいらねーよ。
もし、もし万が一、そうなったとしても、
その時に、ちゃんと言うから。
何も、今、別れなくてもいいだろ?』
今、一番好きなのは、アキだ。
そばにいられらくなることも、
まだ、想像できねぇ。
他の女と一緒にいる自分なんて、
もっと、想像できねぇ。
それを言葉にすることすら…
怖くて、できねぇよ。