第15章 100回目のプロポーズ
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ついにきてしまった、卒業式の日。
俺は東京の大学にスポーツ推薦、
アキは、地元から通える美大に合格していた。
つまり…これからは、遠距離恋愛だ。
制服を着て歩く、最後の道。
名残惜しくて…
卒業式の後の帰り道も、
帰りたくなくて、
ずっと遠回りをしていた。
今日、初めて、手を繋いで歩いた。
いつもは、
どっちかがふざけたり照れたりして、
今まで、
外で手を繋いだことはなかった。
でも、今日は、特別だ。
どんなにキスを重ねても、
どんなに身体を重ねても、
手を繋ぐのは、
それとは違う気持ちがある。
誰かに見られてもいい。
離したくない。
手のひらごと、ギュッと握ったり、
指先だけ絡めたり。
とにかく、どこか触れてないと。
一度離してしまったら、
そのまま遠くへ行ってしまいそうで。
…今日だけは、
ボールより、
アキの手に、触れていたい。