第15章 100回目のプロポーズ
二人で過ごす、短い時間。
次はいつ会えるか、まだわからない。
一ヶ月先?半年先?
だから、
一瞬も無駄にしたくない。
その日は1歩も家から出ず、
ずっと二人で、部屋で過ごした。
抱き合って、しゃべって、
また抱き合って、ウトウトして、
ちょっと飯、食って、また抱き合って…
あれだけいつも
絵の事を考えているアキだけど、
俺と過ごす時間は、
一切、絵筆を握らない。
それは、俺が頼んだことじゃない。
『私、描き始めると、それ以外のこと、
全部、後回しにしちゃうから。』と、
アキが自分で決めたことだ。
だから、俺がいる間はいつも、
俺の事を最優先で考えてくれる。
それは、嬉しい。
素直に、嬉しい。
だけど逆に…
それが、
アキが俺のプロポーズを断り続けてる
理由でもある。
…俺が初めてアキにプロポーズしたのは、
高校の卒業式の日だった。