第15章 100回目のプロポーズ
~そこまで思い出したときに、
アキが声をあげた。
『ん!でかした、トビオ!
ここのアップルケーキ、
すっごくおいしいんだってば!
ね、一緒に食べよっ。』
引き出物の中の物を
一つ一つ、取り出して見ていたアキが
赤い箱を持って、嬉しそうな顔でキッチンへ行く。
…俺たちの思い出話は、また後で…
『トビオ~、何、飲む?』
『何がある?』
『んーとね…』
アキの後を追って、俺もキッチンへ。
冷蔵庫の中を覗き込んでいたアキ。
『麦茶とコーラと牛乳。』
『じゃ、熱いコーヒー。』
『えー?お湯、沸かすの、面倒くさい…』
『あのさ、俺ら、久しぶりに会ったんだぞ?
もちっと、優しくできねーのかよ?!』
『だって、早く食べたいじゃん。』
『それを言うなら、俺はこっちを、早く食いてぇ…』
アキの腕をグッとこっちに引き寄せて
そのまま俺の腰に両手をまわさせる。
『トビオ…アップルケーキが…』
『うるせぇ、ちょっと黙ってろ。』
アキの唇を塞ぐ。
あぁ、久しぶりだ。
甘くて柔らかな、コイツの唇。
…俺の、唇。
『アキ、
久しぶりに会った時は、何て言うんだっけ?』
『…トビオ、逢いたかった…』
『じゃ、久しぶりにキスした時は?』
『…トビオが…欲しい…』
わがままで、自分勝手なコイツが
そうやってお願いしてくるのがたまらなくて、
今日まで、遠距離恋愛が続いてきたようなもんだ。
俺たちだけの、挨拶。
そして、
短くて濃い、
"二人の時間"が始まる。