第14章 祝福の拍手
アキ?
…なんで、黙る?
なんで、うつむく?
後悔が、怒濤のように渦巻く。
聞かなければ、よかった。
あんなこと、口にしなければよかった。
さっきまで、あんなに幸せだったのに。
アキ…
怒ってる?
それとも、
やっぱり烏養さんのことを?
裸のまま、
壁際でうつむいていたアキが、
俺に手を伸ばす。
触れてほしく…ない。
アキがイヤだからじゃない。
あんなことを口走った自分の愚かさに
嫌気がさしたからだ。
幸せにすると誓った直後に
アキに悲しい顔をさせている俺。
『抱きたい』なんて、
言わなければよかった。
あのまま、食事にでも行って
二人で乾杯しとけばよかった。
ホントに、バカだ。
俺、
アキのそばにいる資格なんて、ない…
そんなことを思ったら、
伸ばしてきたアキの手を避けてしまった。
『…アキ、結婚、延期する?
それとも…止める?』
『違う、違うの。』
『…じゃ、なんで黙っちゃうんだよ…』
言葉にすればするほど、
自分の愚かさに、醜さに吐き気がする。
憧れてた人と結婚できる。
それ以外に何が必要だった?
世界一、好きだとでも
言って欲しかったのか?
アキと烏養さんが、
お互い、嫌いで別れたわけじゃないと
知っていて、つきあったんだ。
心のどこかに、
忘れられない思いがあってもしょうがない。
例え、烏養さんへの気持ちが残っていても、
アキは俺を選んでくれた。
それで充分だ。
それなのに。
沈黙が、怖い。
悪いことばかりが思い浮かぶ。
いっそ、
ハッキリ言われた方がマシだ。
『…なんか言ってくれよ…。』
『…忠くん…ごめんね…』
ごめん、か。
ごめん、の一言で、
俺たち二人の1年間が終わるのか。
やっぱり、夢だったんだな…
…だけど。
その後、アキが口にした言葉は、
俺の予想とは、全く違うものだった。