第14章 祝福の拍手
『今ごろ、タバコに火をつけてるかな。』
『足、組んで。』
『煙、吐きながら、
ちょっと、苦笑いしてさ。』
『煙たそうに、
眉間に皺寄せて目を細くしてるはず。』
『片手でジャンプめくってるかも。』
『でも、ペラペラめくるだけだよね。』
『多分、今夜、
嶋田さんたちと飲みに出るだろうな。』
…俺とアキが思い浮かべた烏養さんは
まったく同じ姿だった。
いつも、誰に対しても変わらない烏養さん。
きっと、俺達が結婚しても、
変わらず接してくれるんだろう。
同じ年のツッキーや日向や影山に比べたら
俺はとても"普通"の人生かもしれない。
でも俺、地元に就職して、よかった。
町内会チームに入って、よかった。
もっとさかのぼれば、
烏野高校に行って、よかった。
バレーやってて、よかった。
…みんなと出会えて、よかった。
心から、そう思う。
横を歩くアキの姿を見る。
夕陽が眩しそうに目を細めながら、
何も言わずに、
でも、
幸せそうな顔をしてくれてる。
『アキ』
『ん?』
『アキ…本当に俺の奥さんになるんだよな?』
『もうっ(笑)
忠くん以外の誰の奥さんになるっていうのよ。』
『夢見てるみたいで…』
『私こそ、そう思うよ。
お父さんにもケイ君にも
おめでとう、って言ってもらえて
結婚できるなんて、夢みたい。』
『…夢じゃないって、確かめさせて。』
『どうやって?』
…俺、
自分からこんなこと口にするなんて、
ちょっとびっくりしてる。
でも、今、どうしても、
アキの生身の手応えが欲しい。
『アキ…今すぐ、抱きたい。』