第14章 祝福の拍手
『忠くん、かっこよかったよ!!』
…アキの家からの帰り道。
俺はグッタリと疲れていた。
でも、
言うべきことをきちんと言えたこと、
アキのお父さんに
結婚を許してもらえたことで
ホッとしているのも確かだ。
『ね、どっかご飯食べに行こうか?』
『うん。…でも、その前に…』
俺がアキを連れて向かったのは
坂ノ下商店だ。
『ちゃんと、報告しよう。』
『…そうだね…』
アキが、俺の手をギュッと握る。
大丈夫。俺が、ちゃんと話すから。
…俺たちの姿を見た烏養さんは
『やっと来たか。』と言いながら
店の中に入れてくれた。
バレーの練習で週に二回会ってはいるけど
周りの仲間に気をつかって、
俺たちがつきあってることは、
烏養さんにしか知らせていない。
だから、こうしてアキと烏養さんが
二人でちゃんと向かい合うのは
久しぶりのはずだ。
『もちろん、いい報告だろーな?』
『はい。今、アキのお父さんに
結婚を許してもらってきました。』
『そうか。よかったな。』
『…ケイ君、その…いろいろ、ごめんね。』
『なんでお前が謝んだよ(笑)それより、山口。』
『は、はい?』
『俺にも、ちゃんと聞かせろ。
お前が早瀬を幸せにする、っていう誓いを。
俺がお前に早瀬を託したんだ。
俺も安心させてくれ。』
『え?え、えと…お、俺、
彼女を幸せにできるように、頑張ります…』
『なんだよ、声、ちっせーなぁ。
そんなんで、大丈夫か?
ホントに幸せに出来んのか?ん?!』
ニヤリと笑う烏養さん。
…あぁ、そうか。
俺の言葉が、
烏養さんにとっての、
次へのスタートになるんだ。
そう気付く。
烏養さんにも、
安心して次に向かってもらえるように。
今度は、
俺から烏養さんへのエールだ。
精一杯息を吸い込み、
外まで聞こえるような大きな声で言った。
『俺、アキと結婚しますっ。
俺がアキを幸せにするって、約束します!!』
『おう、それなら納得だ。
早瀬、山口はいい男だよ。
それは俺が保証する。幸せにな。
…さーてと。
目の前でいつまでもイチャイチャされちゃ
独り身のこっちはたまんねーわ。
さっさと帰れ。』
追い出されるように、店を出る。