第14章 祝福の拍手
目的地のないドライブ。
とりあえず、
日暮れから夜に向かう海岸線を走る。
何を話していいかわからない俺に
早瀬さんが話しかけてきた。
『…昨日の私、ヘンだった?』
『え?ええと、ヘンっていうか、
ちょっと違う、ってくらいで…
どこが、って言われても困るんですけど
なんかちょっとだけ疲れてる、みたいな感じ?
ですかね…』
『山口君だけだよ、そんなこと言うの。』
…いつも、じーっと見てますから、
なんて言えない。
ストーカーみたいだもんな…
『す、すみません、そんな気がしたってだけで…』
『責めてるんじゃないから謝らないで。
…嬉しかったの。』
『…え?』
『本当は、元気なかった。
でもみんなに心配されるのイヤだったから
元気なふりしてた。
…心配されたくなかったはずなのに、
山口君が気付いてくれた時、
ちょっとだけ嬉しかったんだよね。
わかってくれる人がいた、って。』
…ここ、喜んでいいとこなのか?
『あの…どうしたんですか、って
聞いていいんですか?』
『…山口君は、真っ黒でサラサラな髪だね。』
かみ?あ、髪のことか?
話、とぶな…
『茶髪とか金髪とか、したことないの?』
『ないですよ。
絶対似合わないって自信あります。
俺、平凡が一番落ち着くタイプなんで。』
ちょっと早瀬さんが笑う。
『それが、山口君の個性なんだね。』
『早瀬さんは…髪、切っちゃうんですか?
今の髪型、すごく、似合ってるのに。』
…チラリと横を見る。
長い髪は、ほんの少し、明るい茶色。
いつも後ろで1つ結びにしてるけど
下は"くるん"と大きなカールになってて、
後ろから見ると、
それが早瀬さんの動きにあわせて
右、左、右、左って大きく揺れたり
ブンブンって跳ねたりするんだ。
元気いっぱいなのに女性らしく見えるのは
その"くるん"の魅力だって思う。