第13章 嫁ぎの紅(べに)
『うぅ…幸せだぁっ!
アキちゃんのことも、律子さんのことも、
俺、一生、大事にするからね!』
日向君の翼が、私を包む。
生まれてから今まで
私を守ってくれたのは、
強くて熱い、
おとーさんとおかーさんの愛情。
これからはもう1つ、
私の安らげる場所が増える。
柔らかくて暖かい、
私の"ひなた"。
もちろん、私も、
日向君の安らぎになるよ。
『日向君、あがって。』
『うん。お邪魔します。』
…108本のバラの花束は、かなりの重さだった。
『これ、ホントに東京から持ってきてくれたの?』
『うん。途中で何人か、声かけられた。
プロポーズですか?って。』
『なんて答えたの?』
『はい、そうなんです、って。
知らない人なのにさ、みんな、
"頑張れ"って言ってくれるもんだね。』
それはきっと、日向君が
ポカポカニコニコしてるからだよ。
特別な才能を持ってる日向君。
みんなに愛される日向君。
そんな日向君に愛される私…
本当に幸せな誕生日!
『アキちゃん、あのさ…』
『なぁに?』
『俺、
プロポーズのことばっかり考えてて、
誕生プレゼント、準備するの、
忘れちゃってたんだよね…』
『え?!いいよ、
花束と指輪とプロポーズで、もう充分だよ‼』
『だからさ…』
リビングに行こうと思ってたのに、
日向君は急に、客間の方に
私を引っ張っていく。
『?!』
布団の上にそっと寝かされて
私の上にのっかってきた日向君は、
耳元でそっと言った。
『誕生プレゼントに、
年の数だけ、キスマーク、プレゼントさせて…』
あぁ…とろける…
…縁下君は
"日向にロマンティックを期待するな"
って言ってたけど、
私にとっては充分、王子様。
でも、さすがに
このプレゼントは内緒だね。
私だけが知ってる日向君ってことにしておこう…