第13章 嫁ぎの紅(べに)
『こんな夜中に、誰だろ?
おかーさん、行ってよ。』
『…』
黙ったままの母が、私の手を掴む。
そしてズリズリと
玄関に引っ張っていかれた。
『ちょ、何?何?』
…鍵がかかっていなかったドアが
カチャリと開く。
ドアの向こうには、
大きな、
"真っ赤なバラの花束"が、
立っていた。
『?!』
『アキちゃん、誕生日、おめでとう!』
花束の向こう側から聞こえる声は…
『日向君?!…来るの、明日じゃなかった?』
バラの花束が少し動いて、
その向こう側に日向君が見えた。
『たった今、"明日"になったよ。
アキちゃんのお誕生日に、
一番最初に"おめでとう"を届けたくて。』
『…あ、ありがと…これ、は?』
大きなバラの花束。
こんな夜中に、
この辺の花屋が開いてるはずがない。
『まさか、新幹線で持ってきたの?』
『うん。』
『…これ、何本?』
『108本。』
『あたし、108歳じゃないよ?』
『バラの花束って、
贈る本数で意味があるんだって。
1本だと"君しかいない。"
3本だと"愛してます。"
100本だと"100%の愛"
101本だと"最高に愛してる"
…みたいに。』
『…108本だと?』
『108本のバラの花束の意味はね、』