第13章 嫁ぎの紅(べに)
明日は私の誕生日。
日向君が会いに来てくれる。
少しでもキレイでいたいなー、と思って
リビングでテレビを見ながら
顔にシートマスクをのせてパックしてると
母も同じようにパックしながら
ソファの横に並んで座ってきた。
真っ白い顔型のシートをのせて
二人で、何とはない話をする。
端からみたらおかしな光景だろうけど
うちではごく当たり前のこと。
『あー、顔、冷えたわ!
アキ、熱い紅茶入れよう。』
二人ともテッカテカの顔で紅茶を飲む。
『明日、翔ちゃんとどこ行くの?』
『まだ全然考えてない。来る時間も
まだ、よくわかんないしね。
日向君が着いてから、
二人で相談して決めようと思ってる。』
『そうか…』
『明日のために、私、もう寝るね。』
『え、ちょっと、もうちょっと話そ。』
『何?何か話、あんの?』
『冷たいわねぇ。あ、肩!肩こってんの。
ちょっと、揉んでよ。明日、誕生日でしょ。
産んだ私に孝行しときなさいって。』
…しょうがないなぁ、と言いながらも
テレビを見ながら肩を揉む。
『はい、大サービスで15分も揉んだよ。
もう、寝るからね』
『明日、何着て行くの?決めた?』
『そんなの、
明日の天気と行き先で考えるから。
ね、美肌のための睡眠タイムは
夜10時から2時なんだよ!
明日、少しでも美人顔で
日向君に会いたいのっ。』
…テレビの画面が、
日付が変わったことを知らせる。
『ほら、もうっ。
12時になっちゃったじゃん!
先に寝ます、おやすみ~っ。』
『…』
母が急に黙り混む。
『何よ?何で急に黙るの?怒ってるの?』
その時。
ピンポーン、と
玄関のチャイムが鳴った。