第13章 嫁ぎの紅(べに)
私も、強くなる。
…そう思ったのは確かなんだけど、
戦隊もののヒーローみたいに
スイッチ入れたら強くなる、
ってわけにもいかなくて。
結局、あれからも何一つ変わることなく
母との二人暮らしが続いている。
それほど家事を手伝うわけでもないし、
口げんかもするし、
飲み過ぎて帰って怒られることもあるし、
たまには二人で外食したり、
化粧品の新作を試しあってみたり、
テレビ見ながら
同じポイントで笑ったり泣いたり。
今までもこれからも、
こんな時間が当たり前のように続くのが
日常ってやつだよね、と思っていた。
そう、心のどこかで。
私は、母の前では、
いつまでたっても
『手のかかる娘』でしかない。
…そんな私の知らないところで
動き始めたものがあったとは。