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ウェディングプランナー(R18) Hi-Q

第13章 嫁ぎの紅(べに)




リハビリの松川先生が、
私の言葉をさえぎった。

『大丈夫ですよ。
3日…は無理でも、1週間ってとこでしょ。
いい骨休めになるんじゃないですか?』

絵美さんも、いつもの口調で言う。

『アキちゃんが留守の間は
うちで私の話し相手してもらっていい?
愚痴がたまってんのよねー。』

ほらね、とでも言わんばかりの顔の母。

『そうそう、アキがいると
却ってやること増えちゃうから。
予定通り、3日間、行ってきなさい。』

『でも…』

一人娘が、
こんな時に母の世話を放って
彼のところへ行くのって、どうなの?

日向君。おかーさん。
どっちも大事。

私、どうしたらいい?

私の迷う心をよんだかのように、
母の声が響く。

『あぁっ、もう!
ぐずぐずしてたら、新幹線、乗り遅れるでしょ!』

おかーさんは、
今まで聞いたことないくらい
厳しい声で言った。


『親か男か、
どっちか選ばなきゃいけない時は、男を選ぶ。
これ、早瀬家の家訓です。
だからさっさと行きなさーいっ(怒)』


…そんな家訓、聞いたことねーし…


でも、さすがに私にもわかる。
これは、母の優しさだ。

心配だけど、行った方がいい。

『松川先生、絵美さん、
面倒くさい母で申し訳ありませんけど
ちょっとの間、よろしくお願いします!
ぐずぐず言ったら、
その足、蹴飛ばしてかまいませんので。』

二人に向かって深く頭を下げると、
もう、振り向かずに、リハビリ室を出た。
立ち止まったら、涙が出そうだから。

『アキ、
翔ちゃんには
仕事休めなかったって言っといて!
大事なときなんだから、
余計なこと考えさせちゃダメよ!!
ケガしたなんて言ったら、あんた、
この松葉杖で殴るからねっ!!!』

母の声が、背中から追いかけてくる。


おかーさん。
おかーさん。

おかーさんの、バカ。

強すぎて、優しすぎて、
涙が出るじゃん…


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