第13章 嫁ぎの紅(べに)
『……うん、……うん、じゃあその日は
おかーさんと応援行くからね。
チャンスだもんね、頑張って!
…うん、じゃーね、おやすみ。』
『翔ちゃん、何のチャンスなの?』
…リビングのソファで長電話を切った私に
母が話しかけてきた。
『今度、全日本の人達との練習試合の
メンバーに入れたって喜んでた。』
『すごい!翔ちゃん、
どんどん大きくなるわねぇ!』
『うん…』
『何よ?嬉しくないの?』
『嬉しいよ。嬉しいに決まってるじゃん。
でも…どんどん手が届かない人に
なっていく気がするよ…
ねぇ、お母さん。これって私の嫉妬かな?』
『まぁ、そう思いたくもなるかもね…
でも、翔ちゃんは何も変わらないんでしょ?』
『うん。人前で一緒にいることに
引け目を感じてるのは、私だけ。』
『引け目?』
『…いっぱいファンの子とかいるのに、
私なんかが、
日向君、独占してていいのかな?』
『ファンがいっぱいいたって、
翔ちゃんの彼女になれるのは、一人だけでしょ。
それも、アキが告白したんじゃなくて
翔ちゃんが、家族みんなの前で
アキのこと好きだって
言ってくれたんじゃない。』
『そうだけど…』
『そもそも、引け目感じるだなんて、失礼だわ!』
『え?誰に対して失礼だっけ?』
『アキは、お父さんとお母さんの
自信作なんだから。
自分で勝手に価値、下げないでよね。
それに、
アキを選んでくれた翔ちゃんにも失礼でしょ!』
『自信作…って(苦笑)』
『誰がなんと言おうと、
アキはお父さんとお母さんコラボの
たった1つの自信作!
その価値に気付いてくれた翔ちゃんは
すごいと思うわ!』
『…そうかな?』