第13章 嫁ぎの紅(べに)
じゃあね、と手を振り
それぞれの改札に向かって歩き出そうとした時、
縁下君が、笑いながら言った。
『あ、多分さ、』
『ん?』
『日向は、
バラの花束とか
夜景の見えるレストランとか
そういうタイプじゃないからな。
あんまりロマンティックなの
期待しないほうがいいぞ。』
『…本当におせっかいなアドバイス、
どうもありがとう(笑)』
縁下君は、軽く片手をあげてから
くるりと振り向き、
改札の向こうに消えていった。
結婚式の時の二人を思い出す。
バルーンを見つめながら
ギュッと抱き締めあっていた
幸せそうな二人。
いろんなことを乗り越えて
あの場面に辿り着いたんだと思う。
縁下君は、
あの奥さんの待つ家に帰るんだね。
縁下君の、安らげる場所に。
私と日向君は…
いつか、そんなふうになれるのかな…
ま、昨日つきあい始めたばっかりですけど。
先に、遠距離恋愛をクリアしなくちゃ、
なんですけど。