第13章 嫁ぎの紅(べに)
笑いながら
そのまま何度も二人で
ちっちゃなキスをして、
だんだん、
気持ちがあったかくなってきた。
『アキちゃん、もう一歩先に進んじゃう?』
『えと、それって…そういうこと?』
『うん。でも、
今日つきあい始めたばっかりだもんね。
まだ、イヤ?』
…これが不思議とイヤじゃないんだよね…
『イヤ、じゃない。でも…自信、ない。』
『自信?』
『上手にちゃんとする自信。
…私、日向君が人生で二人目だから。』
『そんなん。俺だって似たようなもんだし。』
『…でも、男の人は、
そういうお店とか行ったりするでしょ?』
『そういうお店?あ、フーゾク的な?』
『うん。遠征先とかで行ったりして
場数踏んでたりするんじゃないの?』
『先輩たちはそうかもしんないけど、
俺、好きじゃない人となんて、
絶対、無理だもん。
彼女としか、したことない。』
私の目を見てそう言ってくれる。
この人、ほんとうに真っ直ぐだ。
『好きじゃない人とは絶対無理だけど、
好きな人にはずーっと触っていたいんだ。
だから俺、アキちゃんに触りたい。』
…胸が、トクン、と鳴る。
日向君の言葉は、まっすぐ、心に響く。
私も、まっすぐ、答えたい。
『うん、私も、日向君、触りたい。』
『ね、アキちゃん、』
あ…
日向君の笑顔。
太陽の光がさしたみたいにキラリと輝いた。
『おんなじ気持ちって、嬉しいね!』
ふんわりと両手で抱き締めてくれる。
…羽みたいに、
やわらかくて、
あったかい…。