第13章 嫁ぎの紅(べに)
『ね、アキちゃん、キスしよーよ。』
急に日向君がそう言うからビックリする。
『だってさ、
みんながそうしていいって言ってんだよ。
俺達が遠慮することないじゃん?』
『そ、そうだね…』
…何時間か前に、突然、
付き合うことになってからというもの
あまりの急展開の連続に
どうしていいのか、わからない…
と思っていたら、
日向君が私の両手をそっと握ってくれた。
びっくりして、
思わず反射的に目をつむる。
ふわり。
つぃっ。
ちゅん。
…あ、鳥みたいなキス。優しくて、軽やかで…
日向君のジャンプみたいなキスだな、
と思った。
目を開くと、日向君が
すっごく嬉しそうな顔をしてる。
『な、なぁに?』
『ね、アキちゃん、身長何㎝?』
『154。』
『うわ~、嬉しいなぁ。』
『なんで?』
『今まで俺がつきあった子、
二人とも俺より身長高くてさ、
キスする時、俺が背伸びすんの、
ちょっと格好悪いな、って思ってたんだけど。
アキちゃんなら、
俺がかがんでキスしてあげられる!』
…そっか、
今まで二人とつきあったんだ、
私は三人目なのね、
とか一瞬思ったケド。
それを隠さず話してくれることとか、
かがんでキスできる!と嬉しそうな
日向君を見てたら、
何人目、とか、どーでもいいことのような
気がしてきた。
…私だって、初めてじゃないしねっ、
つっても、ま、日向君で二人目。
まだまだ恋愛若葉マークですけど…