第13章 嫁ぎの紅(べに)
ご飯を食べた後、
結局、帰ることにした。
…だって、いきなり朝帰りって…
ミエミエすぎて、それこそ顔から火が出る。
日向君が家まで送ってくれると
母が小走りで玄関まで出てきた。
『あぁん、もう!
門限ナシって言ったのに
なんでこんなに早く帰ってくんのよ!』
…これが親の言うことでしょうか?…
何も気にしない笑顔で、日向君が言う。
『律子さん、これからもアキちゃんと
試合見に来て下さいね!』
『あら!私も行っていいの?』
『もちろんです、ぜひ!』
『もう、翔ちゃんったら…出来た男!』
『じゃ、これで失礼します。またね、アキちゃん。』
『ちょっと待って、翔ちゃん。
今夜はうちに泊まっていって。』
…は?
はぁっ?
おかーさん、頭、おかしくない?
せっかくちゃんと送ってくれたんだよ?
なんで、おかーさんが引き留めますかっ?
『やっぱり、翔ちゃんのお母様の言う通りだわ。
"あの子がもし何もできなくて
アキちゃんを家まで送ってきたら
そんな根性ナシはうちに入れないって
伝えて下さい"って言ってらしたのよ。』
…うちの母もおかしいけど、
日向君ちのお母さんも、相当、個性派?…
『だから翔ちゃん、あなた、どのみち
今夜は帰る家、ここしかないから。
うちに泊まって行って。』
『あ、でも着替えも何も…』
『大丈夫!
こんなこともあろうかと、
帰りにウニクロで一式、揃えてきましたっ!』
Vサインを掲げる母と、
なぜか拍手してる日向君。
…太刀打ち出来ない完全包囲。
両家の母パワー、恐るべし、です…