第13章 嫁ぎの紅(べに)
『まぁまぁ、あとは若い者同士で…』
とでも言いたげな、その場の空気におされて
私と日向君は初めて、
二人だけでご飯を食べに行くことになった。
うちの母は後ろから大きな声で
『アキ、今夜は門限ナシだから♥』
と手を振ってるし、
日向君のお父さんは
『翔陽、お金、持ってるか?』
と心配してるし、
日向君のお母さんは
『翔、バレーの話ばっかりしてちゃ
ダメだからね!』
と気をつかってるし、
縁下君は日向君に
何やら耳打ちしてるし…
まるで、国を代表して
オリンピックにでも行くかのような
見送られっぷりで、
私たちはその場を後にした。
『日向君、いいの?こんな始まり方で。』
『え?いいよ?アキちゃん、イヤ?』
『イヤじゃないけど…
最初からオープンすぎない?』
『そうかな?
家族がちゃんと相手を知っててくれるって
安心じゃん?』
…そうか。
縁下君が言ってた『裏表がない』って
こういうこともあるんだろうね。
嘘ついたり、隠し事したりしない。
私も、おかーさんに隠し事なんか
絶対出来ないもん。(すぐバレる。)
だから、想定外ではあったけど、
むしろこんな始まりかたも
案外、いいかもしれないな。