第13章 嫁ぎの紅(べに)
翌日。
仕事先の自販機の前で、縁下君に会った。
『ね、日向君って、どんな人?』
…もとはといえば、
縁下君の結婚式が始まりだ。
あの日、母と日向君が仲良くなったこと、
昨日、試合を見に行ったことを
簡単に話してみた。
『試合してる時と普段があまりにも違うし、
また来てねっていう言葉が
本音かどうか、わからなくて。』
縁下君は、コーヒーを飲みながら言った。
『日向?簡単。バレーが大好きで、
誰とでもすぐ仲良くなれて、
真っ直ぐで、素直。それが全て。
裏表なんて全然ないヤツだよ。』
『でも、試合中は別人だったよ。
どっちが本当の日向君なんだろ。』
『それも含めて、全部、素の日向だね。
試合中の日向って、すごくない?』
『うん、鳥みたいに見えた。』
『だろ?そう思ったらもう最後。
忘れられないよ。
日向から目が離せなくなる。』
『そうなの?』
…飲み終わったコーヒーの紙コップを
グニャッと丸めてごみ箱に入れながら、
縁下君は、こともなげにサラリと言った。
『早瀬と日向…いいじゃん。つきあってみれば?』
『…向こうはスターで、私は一般人ですから。』
『ハハハ。
初対面で家まで送らせといてよく言うよ。』
『てか、別に、好きとかじゃないし。』
…気になってるだけ、だし。…