第13章 嫁ぎの紅(べに)
ちょっとだけ説明させてもらうと、
うちは早くに父が亡くなり、
母と一人娘の私の二人暮らし。
看護師をしながら
私を女手1つで育ててくれた母は
夜勤などで家を空けることが多かった。
だから、
私が誰かの家に泊めてもらったり、
逆に、友達を家に呼んで
うちで晩御飯食べたり
泊まっていったりするのを
むしろ歓迎してくれた。
私が独りぼっちにならないように。
母の知らないところで
危ない人とつながったりしないように。
私の友達は、男も女も母公認。
私がいなくても、
勝手に母に会いに来る友達もいる。
だから、日向君と母が仲よくなるのも
不思議じゃないんだけど…
でも、私より先に仲良くなるって、
ちょっとどうかと思うけどね?!
…とにかくそんなわけで、
母と日向君はすっかり意気投合し、
友だちになっていた。
バレー好きな母にしてみれば、
Vリーグの選手が家にやってきた、
というのがすっごく嬉しかったみたいで、
その日、
日向君と2ショットで撮った写メは
母の宝物として、
スマホの待ち受け画面に設定されたほど。
私?私は…別に…
だって翌日には日向君も東京に帰っちゃったから
親しくなる暇もなかったし。
"酔っ払った私を送ってくれた人"
という程度だったんだ。
…そんな私が
日向君と結婚する日が来るなんて、
その時は思いもしなかったなぁ…