第3章 受け継ぎ婚
仕事もそこそこに新幹線に飛び乗り
広島まで駆けつけた。
黒い服の人ばかりが行き交う通夜会場の中で、
アキは、忙しそうだった。
かける言葉が見つからない。
寝てないんだろうな。
自分が疲れてることにも
気づいてないんじゃないだろうか。
『あ、大地!』
アキが駆け寄ってくる。
『来てくれて、ありがとう。
バタバタしてて、ごめんね。
ほら、私も喪主なんて初めてだからさ、
葬儀って、慌ただしいものなんだね。
そうだ、これ。
会社の方たちにお土産。
新年度なのにお休み下さったんでしょ。
ここのもみじまんじゅう、おいしいよ~。』
いつもと変わらない様子が
かえって切ない。
『アキ…』
家族でも親戚でもない俺。
ここでは、無力だ。
日頃、あんだけ
“必要とされたい“なんて思っているくせに、
いざという時に
何の役にもたてない自分に腹が立つ。
アキは、人前で涙を流すこともなく
立派に喪主を勤めあげ、
全ての後片付けを終えてから、
東京へ帰って来た。