第3章 受け継ぎ婚
『あ~、やっと帰ってきた~、東京〜!』
トランクも荷物もそのままに、
アキがソファに倒れ込む。
『お行儀悪くて、ごめんね~』
『いいよ。アキ、疲れたろ。』
『そうだね、正直、さすがに疲れた。』
『俺、なーんもしてやれなくて、』
ごめん、と言おうとした時、
アキが俺の唇に人差し指をあてて
言葉を遮る。
『まさか“ごめん”とか言うつもりじゃないよね?』
『…言うつもり、だったけど。』
ソファから起き上がったアキ。
アキとこんな風に向き合うのは久しぶりだな。
そんなことをふと思う。
アキは真っ直ぐに俺を見て、
そして、静かに言った。
『ねぇ、大地。私は、
いつだって絶対に大地が待っててくれるって
信じていられるから、
どんなに離れてても不安じゃないし、
次に会う時のことを考えたら何だって頑張れる。』
…アキ…
『大地が必要。
大地が一番。
大地が大好き。
…はぁ、久しぶりに
いっぱい大地の名前を呼べて、幸せ…』
ストレートな言葉が、俺の胸を射ぬいた。