第1章 結婚一番乗り!
その女性…ゆうとのママに
俺は見覚えがあった。
向こうも、俺の顔を見て動きが止まる。
『もしかして、にしのや、君?』
『え?あれ、早瀬?!』
…中学時代の同級生と、10年ぶりの再会だった…
『にしのや君、いつからここで働いてたの?』
『3年前。でも俺、
月曜はいつも出張教室で外に出てるから。』
『そうなのか~。
ゆうとは半年前からここに通ってるけど、
月曜だったから会わなかったんだね』
そんな話を遮ったのは
『ママ、おなかすいた~』という
ゆうとの声だった。
『ごめんごめん、そうだよね。』
『そうだな。よし、飯でも食いに行くか!
…って誘いたいところだけど、
この時間に主婦が急に外食ってわけには
いかないよなぁ。』
『うーん、ええと、私たちはかまわないけど…
西谷君は帰らなくて大丈夫?』
『俺?俺はいっつも、
スーパーの値引惣菜で一人メシ。
相手してくれるなら嬉しいくらいだ。』
…そんなわけで、
3人でファミレスに立ち寄った。
『早瀬、中学の頃から数学得意だったよな~。
俺、何回も宿題うつさせてもらったっけ。』
『西谷君、 授業中、寝てばっかりだったじゃん、
あれで勉強、わかるわけないよね(笑)
でも、文化祭とか体育祭とか、
西谷君がいるとすっごく心強かった。
もりあげ上手っていうか。』
中学校の頃から順番に思いで話に花が咲き、
そして最近の話になる。
『…てなわけで、私はゆうとを産んですぐ
離婚しちゃった。現在、シングルマザー歴5年目。』
『そっか。すげーな。
子育てして仕事して家のこと毎日やるって、
お前、すげーよ。一人で頑張ってるんだな!』
『いやー、毎日のことで精一杯。
今日みたいに、
ゆうとを一人で待たせちゃうこともあるし。
とても頑張ってるなんて言えないよ~』
『いや、誰が何と言おうと、早瀬は頑張ってる!
自分のこと1つロクにやってない俺より、
はるかに頑張ってるって!』
…西谷君、全然かわってないね。
あの頃も今も、優しい人。
そう言って、早瀬が笑った。