第1章 結婚一番乗り!
放課後のグラウンドで、
子供たちが駆け回る。
最近の子供たちの習い事の中で
増えてきたものの1つ、
“スポーツクラブ“
体操や跳び箱や走り方…
そんな運動の基本を遊びのように教えるのだ。
『ノヤ先生、走るの得意?』
『あったりめーだろ!
俺はスポーツならなんでも得意だ!
一番得意なのは、バレーだけどな。』
『ぼく、かけっこ早くなりたい!』
『早く走るにはなぁ、
ズバッとスタートして、グンと前に傾いて、
あとはビュンと加速だ。』
『なにそれー、全然わかんないしー。』
スポーツも子供も大好きな俺にとって、
この仕事はサイコーに楽しい。
『ノヤ先生、また来週も走り方教えてー』
『ノヤ先生、バイバイ!』
夕方六時半を過ぎると、
子供たちは送迎バスやお迎えで
それぞれに帰っていく。
ほとんどの子供が帰った中、
受け付け前のソファに足をブラブラさせながら
一人で座っている男の子がいた。
初めて見る子だ。小学生…より小さいかな。
『かあちゃん待ってんのか?』
『かあちゃんじゃないよ、ママを待ってるんだ。』
『そーか。お前、名前は?』
『ゆうと。』
『へー、ゆうと、か。俺に似てるな。俺は、ゆう。』
『ノヤ先生、ゆうって名前なんだね。』
『おう、よろしくな!』
受付の女性が声をかけてきた。
『ゆうと君はいつも月曜日に来てたんだよね。
でもお母さんの仕事の都合で、今週から金曜日。』
『へぇ、俺、月曜日は出張教室担当だから、
今まで会ったことなかったんだな。
金曜なら、これから毎週一緒だ。
よろしくな、ゆうと!』
『あ、あれはゆうと君のママの車かな?』
まもなく、どこかの会社の制服を着た女性が、
自動ドアにぶつかりそうな勢いで走ってくる。
『ゆうと、遅くなっちゃった~。
今日も待たせてごめんね!!』