第11章 ガーデンパーティー
…世の中は、
バランスとタイミングなんだって
つくづく思う。
アキとの生活が順調になり始めた頃から、
仕事も面白くなってきた。
自分が
日々の生活に気を使うようになって初めて、
身の回りの出来事に
興味をもてるようになってきたのだろう。
地元の文化を受け継ぐ人や
町おこしのために地道に活動する人達、
旬の食材の収穫。
新しいチャレンジを始める人。
…そんな足元の情報を
誰かに伝えたいと思えるようになった。
そして、
アキの料理。
初めて会った時に
涙を流して食べた味噌汁。
悩んでいる時に
心をほぐしてくれたシチュー。
結婚したいと決意を固めた
焼おにぎり茶漬け。
それ以外にも、
アキの作る料理に
俺自身、何度も救われてきた。
アキのあの才能を
多くの人の為に役立ててもらいたい。
そのために出来る仕事こそ、
文化部の記者じゃないだろうか。
アキの料理の力が必要な人と
アキをつなぐ。
アキの手を介することで、
もっとおいしくなれる食材を見つける。
そうやって、
アキと地元を繋ぐことこそ
俺だから出来る仕事じゃないかと
思い始めたんだ。