第11章 ガーデンパーティー
その日の夜、
アキのキッチンに立ち寄った。
『約束してなかったのに、急に来てごめん。』
『かまわないけど、どうかした?』
『顔が見たくなって。』
『…ホント?嬉しいな。
あがって。夕食、まだなんでしょ?』
『うん。何かある?』
『ちょうどよかった。
試作中の冬野菜のシチューがあるの。
ぜひ、感想聞かせて。』
…準備してくれている彼女の姿を
眺めるのが好きだ。
赤くて重そうな楕円形の鍋の蓋を
彼女が持ち上げると
白い湯気がふわっと立ち上がって
彼女の姿が、ぼやける。
『結婚して、毎日この姿をみたい』
そう思うのは、
やっぱり男の身勝手なのかな?
いや、そんなことよりも今は、
俺は男として仕事とどう向き合うか…
くそ、心が定まらない。
好きな女の前でぐずぐず考えてる俺、
みっともねーな。
そもそも、
仕事の悩みを彼女にきいてもらおうなんて
それこそ、情けねえか?
…でも、やっぱりアキの料理は特別だ。
シチューを食べているうちに
さっきまでのこんがらがった気持ちが
自然とほどけてきた。
アキにだから、話せる。
アキにだけは、話したい。