第3章 受け継ぎ婚
いつもより
かなり激しく愛し合ったあと、
倒れこんだベッド。
明日からは離ればなれだと思うと、
眠る時間さえ惜しい。
アキのしなやかな身体を
やわやわと触りながら
俺達はいつまでも話していた。
思い出話。
仕事への思い。
将来の夢。
そして、俺達の未来。
『なぁアキ、アキのお父さんってどんな人?』
『なに、それ。急に何の話?』
『俺がいつかプロボーズする時、 挨拶に行くだろ。
そん時のこと、想像してた。
やっぱ、一回くらいは反対するのかな?』
『“お前なんかに娘は渡せん!“的な?』
『そうそう。
もしお父さんがそうやって言ったら、
アキ、どうする?』
『んー、父には逆らえないかな。』
『え~~~~~~っ!!!』
『嘘に決まってるじゃん(笑)
でもさ、やっぱり父には祝福してほしいな。
だから、』
ここで、わざとらしくコホンと咳払いして
わざと低い声を出すアキ
『澤村大地君、 君は遠距離恋愛中、
脇目もふらず、仕事に邁進してくれたまえ。
もし、よそ見したら…』
『よそ見、したら?』
アキは急にベッドから起き上がり、
今度はものすごい身ぶり手振りで話し出す。
『私、吉本で女芸人になる!
ゆかた姿で相撲とりながら、
“これが澤村大地の、や~り方かぁ“とか叫ぼう。
それとか、すっごいジェットコースターに
乗せられて変な顔をさらしながら
“私の女盛りを返せー、澤村大地~“って
全国ネットで叫ぶの。』
『なんだそりゃ(笑)てか、絶対ヤダな。』
…そんな(?!)やりとりで始まった
遠距離恋愛から3年。
ようやく
俺が東京に戻ることになった
今年の春、
今度はアキが、
実家のある広島に
帰ることになる。
お父さんが倒れた、
という理由で。