第10章 公開プロポーズ
その後、温泉にはいり、
ちょっとぶらぶら観光も楽しみ、
帰途についた頃には
周囲は暗くなり始めていた。
車を運転していた光太郎が
ふと思い出したように聞く。
『な、しんどい時、何を思い出した?』
『…知りたい?』
『知りたい。っていうかさ、それ、
1位のご褒美にご馳走しちゃるわ。
ビール?あ、アキなら寿司かな?』
『…あのね…光太郎。』
『ん?』
『光太郎のことを考えながら走ったの。』
『…この~っ。かっわいいヤツ!』
光太郎が急にハンドルをきる。
『よし、ご褒美は、俺だ!』
道路脇の松林の中に車を停める。
『…そんなに急がなくていいけど?』
『いや、俺が、今、したい。』
『もうちょっと行けば、ホテルあるんじゃない?』
『したこと、ある?カーセックス。』
『…ない…』
『実は俺も、ないんだよね~。
だからさ、今日はアキの1位の思い出に
二人で初体験してみよ~っ!』
『それって、1位、関係なくないっ!?』
…いつものことだけど。
光太郎といると、
どんな些細なことでもイベントになる。
私自身、
そんな光太郎の行動を見てると、
あきれながらも
どこかワクワクしてしまうのだ。